ロマネスク美術革命/金沢百枝

感じろ、その次に考えろ
ロマネスク。古代・ルネサンスの写実的美も、ゴシックの壮麗さも持たないその美術様式は、一見すると子供の落書きのようである。
歴史的意義や奥深さを引き合いにロマネスクを評価する言説も多々あるが、なにかこう、「苦しい」という印象を拭えないでいた。
だが、本書の筆者はロマネスク美術に相対して言い切る。「かわいい」と。
‥そうか、それで良かったのか。さよう、ロマネスクを味わうのに必要なのは、臆することなくかわいいと感じる感性だったのだ。
余人に言わせればかわいいは正義だという。ならばロマネスクは正義だ。もう恐れるものはなにもない。あとは本書を味わうのみである。