チーズとうじ虫 / カルロ・ギンズブルグ
「そしてチーズの塊からうじ虫が湧き出るように天使たちが出現したのだ」
16世紀、イタリアの農村の粉屋、メノッキオ。顔が広く議論好きで、聖書に関する自説を風調したがる、そんな男。 だが、その自説が問題だった。
「そしてこの主なる神とはなんなのか。土と水と空気以外のなにものでもない」。 それは、教会の権威など歯牙にも掛けぬ、恐ろしくラディカルで、見様によっては現代人的で、もはや異端という形容すら生ぬるく異端審問官も困惑する、そんな思想。
本書は、そんな田舎の粉屋の世界観がいかなる影響のもとに生まれたのかを、当時の背景とともに解き明かしていく。宗教改革、再洗礼派、ボッカチオ‥。だが、その中核はメノッキオ自身の思索に他ならない。
メノッキオの言葉に「キリスト教的世界観」の最果ての風景を見よ。そして、そんな危険思想の持ち主が、意外とぞんざいに処理される、当時の農村ののどかな姿もついでに見よ。